生徒全員「美術好き」だからこそかなう「魔法」 美術英語や海外研修を通じて知性、技術、感性を磨く 女子美術大学付属高等学校・中学校|中学受験情報 朝日みつかるナビ
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生徒全員「美術好き」だからこそかなう「魔法」 美術英語や海外研修を通じて知性、技術、感性を磨く 女子美術大学付属高等学校・中学校

女子美術大学付属高等学校・中学校 石川康子校長(写真右)と広報部主任の並木憲明先生(同左)に

女子美術大学付属高等学校・中学校(東京都杉並区)は「美術」を核にした革新的な教育で知られる伝統校です。日本はもちろん世界で活躍する自立した女性を目指し、英語と美術を融合した「アートイングリッシュ」をはじめ、一般教科にも美術の要素を採り入れる独自の学習に取り組んでいます。「美術が好き」から始まるという教育内容について、石川康子校長(写真右)と広報部主任の並木憲明先生(同左)にお聞きしました。

目次
高校卒業までに約100単位 美術の「魔法」で味付け
AIも積極活用 元素はキャラ化して描く
パリやローマへ研修旅行 ロサンゼルスの企業訪問で自作プレゼン
美術系以外の進路も手厚く 中1から女子美術大学との連携授業
中学入試は実技試験なし 「好きでさえあれば、道は広がる」

高校卒業までに約100単位 美術の「魔法」で味付け

――教育理念、教育方針を教えてください。

石川康子校長 女子美術大学の前身、女子美術学校は1900(明治33)年、「芸術による女性の自立」を建学の精神に掲げて創立しました。良妻賢母をよしとした時代に革新的なことでした。15年後、本校の前身の女子美術学校附属高等女学校が設立されました。以来、この建学の精神を中学から大学まで共有しています。

教育理念は「三つの美」です。「智の美」「芸(わざ)の美」「心の美」。知性、技術、感性を磨くことを目指しています。

――やはり美術に重きを置いた教育内容なのですか。

石川校長 名前の通り美術系の学校で、美術の授業時間が普通の学校より多く、中学で週4時間、高1は美術史を合わせて週7時間、高校2、3年は週10時間あります。ただし本校の高校は普通科課程なので、3年まで数学など一般教科を学びます。高校卒業には74単位以上必要と定められていますが、本校は約100単位です。

美術の授業=学校提供
美術の授業=学校提供

――3年間で100単位は大変そうです。

石川校長 知性と感性は互いに支えあい、両立するという信念に基づいたカリキュラムです。生徒全員が美術を好きですから、一般教科にも美術の要素を盛り込んで興味を持って学べるように工夫しています。「魔法のスパイス」とか「美術のパウダー」とか呼んでいる、教員一人ひとりの工夫が見られます。美術の味付けで馴染みやすく、という試みです。

AIも積極活用 元素はキャラ化して描く

――一般教科で見られる「美術のパウダー」の活用例にはどんなものがありますか。

並木憲明先生 国語の授業で俳句を学んでいる時に、松尾芭蕉の句をいくつかAIに読ませて絵を描かせてみました。AIはおどろおどろしかったり、どぎつかったり、生徒たちのイメージと全く違う絵を描きました。自分たちが思い描いた句の印象に近い絵になるようにAIに言葉で指示(プロンプト)する、という学習をしました。

石川校長 やはり国語で、朱鷺(とき)色とか生成(きなり)とか、和の色をテーマに短い小説を書かせたこともあります。化学の授業では元素をひとつ選んで、その性質に合ったキャラクターを描いてもらいました。折り紙で正多面体をつくるのは数学の課題です。

並木先生 学校として取り組んだのが英語で、美術を専門とするネイティブ教員から生きた美術英語を学ぶ「アートイングリッシュ」です。近年、教科横断が注目されていますが、その先駆けと言えるでしょう。

中学では美術に関する単語や表現を学び、自分の作品の魅力や制作過程を英語で説明できるようになることを目指します。高校ではより高度な美術英語や表現を学び、アーティストとして国際社会で活躍する基礎を築きます。

アートイングリッシュの授業=学校提供
アートイングリッシュの授業=学校提供

パリやローマへ研修旅行 ロサンゼルスの企業訪問で自作プレゼン

――海外研修にも美術の要素が盛り込まれているのですね。

石川校長 高校生を対象に、フランス・パリとイタリア(ローマ、フィレンツェ、ミラノ)での美術研修旅行を長年続けています。パリではルーブル、オルセー、オランジュリーの三大美術館から現代美術まで巡り、エッフェル塔や教会をスケッチします。イタリアはルネッサンス黄金期の作品に出会う旅です。

パリ美術研修旅行=学校提供
パリ美術研修旅行=学校提供

並木先生 今年から始めたのがアメリカ・ロサンゼルスでの美術・企業訪問ツアーです。美術館や映画制作の現場を訪れたほか、業界をリードする日本のデザイン会社のロサンゼルス事務所を訪問し、英語でデザインのプレゼンテーションを行いました。

ロサンゼルス美術・企業訪問ツアー=学校提供
ロサンゼルス美術・企業訪問ツアー=学校提供

中2、中3対象のマレーシアでの語学・文化研修旅行も今年初めて実施しました。美術館や宗教施設の訪問に加えて伝統の染色、バティックも体験しました。

マレーシア語学・文化研修旅行=学校提供
マレーシア語学・文化研修旅行=学校提供

美術系以外の進路も手厚く 中1から女子美術大学との連携授業

――進学状況について教えてください。

石川校長 卒業生の8割以上が女子美術大学と短期大学に進学します。美術系の他大学も合わせると約90%が美術系への進学になります。一般大学志望者には高3で美術の授業に替えて一般科目を学べる学科選択制度があります。もし仮に、ある科目の希望者がひとりだけだとしても、講座を開きます。

――美術系以外への進路指導もずいぶん手厚いのですね。

石川校長 どういう道に進んでも美術を学んできたことが必ずいきる、と信じているからです。本校の教育は発想力を伸ばしますから、美術やデザイン関係に限らず、総合職で活躍している卒業生も大勢います。

AI時代のいま、AIができないことが出来る、AIを使いこなすことができる人材が幅広く求められているのです。そして「美術が好き」ということは人間の核になります。進路にかかわらず、一生楽しめるのです。

――女子美術大学との連携も盛んですね。

石川校長 中学1年から高校3年まで全学年を対象に中高大連携授業を実施しています。大学の先生に授業時間を預けるのではなく、中高の美術のカリキュラムの中で大学の先生が来て教えてくれる形です。 大学の先生に直接指導を受ける機会になり、内部進学率の向上にもつながっていると思います。逆に生徒が大学に行って大学生と一緒に授業を受け、大学の単位を取ることもできます。

女子美術大学との連携授業=学校提供
女子美術大学との連携授業=学校提供

中学入試は実技試験なし 「好きでさえあれば、道は広がる」

――どういうお子さんを迎えたいですか。

石川校長 絵を描くことが大好き、ものづくりが大好きな人、ということに尽きます。本校は約1100人の全員が美術好きです。教員もよき鑑賞者という意味で美術好きです。運動が好きな子、本が好きな子、勉強が好きな子など、いろいろな個性の生徒がいますが、全員が美術好きなことが学校の一体感になっています。

高校入試では入学後に内部進学生との間で美術の力の差が出来ないように、水彩や鉛筆デッサンの実技試験を行いますが、中学入試では美術の実技試験はしていません。下手でもいいのです。好きでさえあれば、本校で学ぶことで力を伸ばし、道を広げることができると自負しています。